ボイトレTips #015 ♪ 声は出ているのに歌詞が聞き取れない

前回のTips#14で「声が出てくれば歌詞は届くもの」というお話をしましたが、今回は声が出ているのに歌詞が聞き取れない人の場合はどうしたらよいか?というお話。
なぜ声が出ているのに言葉が伝わらないのか?
それは「歌う」ということと「言葉を伝える」ということがリンクしていないんですね。
「歌うこと」イコール「声を出すこと」になっていて、声を出すことで満足している、歌うということがそれで完結してしまっている。つまりそれは自分のためだけに歌っているわけですから、歌詞の内容、その歌のメッセージを誰かに伝えようという思いが希薄になります。当然それでは歌詞が伝わる筈もありません。
歌の心が伝わらないボーカルはいくら声が出ていてもリスナーは感動しません。
このタイプの人は得てして自分のボーカルが大好きだったりしますが、僕がレッスンを通じて知る限り、伝わる歌を歌うプロのシンガーは皆、自分の歌に満足していません。自分の歌に酔ったりしていないのです。まずはここから意識改革です。
改革の一つ目は自分の歌に酔っているということに気づくこと。そして二つ目はその歌を通じて誰かと感動を共有したいという思いで歌うようにすること。この意識があるか無いかがプロとアマチュアの大きな差になります。
ポイントはこの二つだけです。
今回の内容は、いつもこのTipsをご覧になっているほとんどの皆さんには、当てはまらないことと思いますが、そういった傾向のあるボーカリストを歌唱指導する場合などに参考にしてしていただけたらと思います。
歌はそれぞれ自由に歌えば良いものです。でも、聞いていて思わずゾクッと感動する歌というのは、謙虚に、ひたすらに「伝えたい」という思いで歌っている歌なのです。
ソフトなものから激しいものまで、恋愛から反戦まで、その内容はさまざまでも、すべての歌、すべてのアートは「メッセージ」なのです。
「伝えたいという思い」これが何より大切だと思います。