ボイトレTips #007 ♪ ブレス音について

発声時の呼吸は安定した腹式呼吸のため口呼吸が基本になりますが、ある受講生から「私はブレス音がマイクに入るのは良くないと思っているので、なるべく鼻で吸うようにしていますが、鼻呼吸でも腹式呼吸は出来ますか?」という質問がありました。
ブレス音、つまり息を吸う時の音ですが、質問された方の説によると「演歌は鼻呼吸なのでブレス音がない」とのこと。これは根拠の無い都市伝説です。その誤りを認識してもらうために実験をしました。まずマイクを歌う時のように近づけて口で息を吸います。とうぜん吸気音がマイクに入ります。つぎに鼻で吸ってみます。やはりシュー!っと吸気音が入ります。むしろ口で吸った時よりも音が大きくなります。演歌などで比較的 大きなブレス音が入らないのは、口で吸うか、鼻で吸うかではなく声の大きさが関係しているのです。マイクで収録された音声は聞きやすい音量に調整しますが、声量のある歌手の場合、歌声の大きさが10、ブレス音の大きさが1とします。歌声の大きさが5の歌手の場合は収録音声のボリュームを上げて音量を2倍にして10の声量にします。するとブレス音も2倍になるという理屈です。つまり声量あるシンガーほどブレス音が小さくなります。鼻で吸うか口で吸うかではないんですね。僕は適度なブレス音が聞こえるのは自然な事だと思いますが、ブレス音にこだわる人も口呼吸、鼻呼吸は直接ブレス音には関係ないのですから口で効率よく吸気して腹式呼吸、つまり的確な横隔膜のコンプレッションを行い、より良い発声を心がけましょう。

ボイトレTips #006 ♪ 声帯を「閉じる」と「締めつける」はどう違うの?

声帯は喉骨の中にあり呼吸時には開き、発声時には閉じます。
声のしくみを簡単に説明すると閉じられた声帯のわずかな隙間から息を吐き出すときにリード楽器のように声帯が振動して音を発します。つまり声帯は閉じていないと発声できないということです。でも閉じるときに声帯の振動を妨害するような力がかかってしまっては豊かな声は出ません。
喉声になってしまうのは声を出そうとして声帯を閉じるときに、声帯の振動を妨げる有害な力も同時にかかってしまうことが原因です。つまり声帯を締めつけて振動を妨げてしまうということです。
ゆたかな発声のために、声帯は「締めつける」ことなく「閉じる」必要があるのです。
しかし残念なことに日本語を話す時の発声は締めつけることで声帯を閉じます。そのため声が持続しないのですが、私たちは声が持続しないことできちんとした日本語を話していると感じるのでやっかいなのです。
声の持続しない歌唱はありえませんから、とくに日本語の場合は会話時と歌唱時は声帯の使い方が違って来ます。「台詞は歌うように、歌は語るように」という言葉がありますが、これは情感の話であって物理的な発声においては「語るように」発声したら歌えないのです。
声帯を締めつけることなく確実に閉じる、という「歌うための発声で、語るように歌う」を目指しましょう。