前回のTips#14で「声が出てくれば歌詞は届くもの」というお話をしましたが、今回は声が出ているのに歌詞が聞き取れない人の場合はどうしたらよいか?というお話。
なぜ声が出ているのに言葉が伝わらないのか?
それは「歌う」ということと「言葉を伝える」ということがリンクしていないんですね。
「歌うこと」イコール「声を出すこと」になっていて、声を出すことで満足している、歌うということがそれで完結してしまっている。つまりそれは自分のためだけに歌っているわけですから、歌詞の内容、その歌のメッセージを誰かに伝えようという思いが希薄になります。当然それでは歌詞が伝わる筈もありません。
歌の心が伝わらないボーカルはいくら声が出ていてもリスナーは感動しません。
このタイプの人は得てして自分のボーカルが大好きだったりしますが、僕がレッスンを通じて知る限り、伝わる歌を歌うプロのシンガーは皆、自分の歌に満足していません。自分の歌に酔ったりしていないのです。まずはここから意識改革です。
改革の一つ目は自分の歌に酔っているということに気づくこと。そして二つ目はその歌を通じて誰かと感動を共有したいという思いで歌うようにすること。この意識があるか無いかがプロとアマチュアの大きな差になります。
ポイントはこの二つだけです。
今回の内容は、いつもこのTipsをご覧になっているほとんどの皆さんには、当てはまらないことと思いますが、そういった傾向のあるボーカリストを歌唱指導する場合などに参考にしてしていただけたらと思います。
歌はそれぞれ自由に歌えば良いものです。でも、聞いていて思わずゾクッと感動する歌というのは、謙虚に、ひたすらに「伝えたい」という思いで歌っている歌なのです。
ソフトなものから激しいものまで、恋愛から反戦まで、その内容はさまざまでも、すべての歌、すべてのアートは「メッセージ」なのです。
「伝えたいという思い」これが何より大切だと思います。
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CMで流れる商品名や企業名にメロディーをつけたもの、たとえば「♪セブンイレブン、いい気分」みたいなものをサウンド・ロゴと言いますが、このロゴを歌うときに気をつけなれればいけないのが言葉をはっきり歌うということ。つまり、当然のことながら商品名や企業名がちゃんと聞き取れることが何より重要となります。
さて、日本語をはっきり認識できるようにするには、ひとつひとつの文字が独立して聞こえるように発音しなければなりません。
しかし、サウンド・ロゴのような商品名を伝える場合は良いけれど、切なさなどの心を伝えるボーカルの場合は違って来ます。ひとつひとつの文字が独立するように発声すると声音が物理的に連続し難くなります。その結果、声量にムラが生じます。声量が安定しないボーカルは説得力に欠けます。つまり滑舌の良い歌では心情は伝わらないのです。歌のお兄さん的ボーカルでは「泣けない・・・」というのは、そういう理由によるものなんですね。
歌詞が入って来ないボーカルを改善しようとして「滑舌を良くして!」とシンガーにリクエストしたらレコーディングがドツボにはまってしまった、というのはよくある話ですが、歌詞が伝わって来ないのは滑舌が悪いからではないんです。おそらくきっと誰でも滑舌を良く歌おうとした途端、歌えてたものも歌えなくなってしまうでしょう。
では、どうしたら歌詞が心に入ってくるようになるか?それは滑舌なんて意識しないで、自然に言葉を発音しながら、母音をよりしっかり出して、なめらかに声をつなげて歌えば良いのです。しっかり声が出てくれば歌詞は届くようになります。
しかしアマチュアの場合は声が出ているのに歌詞が聞き取れないという人もいます。こういった人のボーカル改善については、また次回お話しましょう!
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なんだか上手く歌えない楽曲ってありますよね、そんなときは歌詞をすべて Nei(ネィ)に置き換えて歌うと音圧やピッチが安定してとても歌いやすくなります。さて、全く同じメロディなのに Nei だと歌い易く、歌詞だと歌い難くなってしまうのは何故でしょう。それは Nei で歌うと声帯がしっかり閉じるのに対して、歌詞で歌った時は声帯の閉じ方が甘くなってしまうからなんですね。そこでこの問題を解決するための効果的なテクニックをひとつ。歌詞の母音に濁点をつけるイメージで言葉を発音して歌ってみましょう。たとえば「あなた〜♪」という歌詞なら「あ”なた〜♪」、「きみが〜♪」ならば「き」の母音は「い」だから「き(い”)みが〜♪」というように歌うと Nei に近い感じで声が出て歌いやすくなります。つまり濁点をつけることで声帯がしっかり閉じるわけです。声帯をしっかり閉じて発声すると息漏れがなくなり、声帯を閉じるための力が不要になります。その結果、喉に力がかからなくなるので声帯の振動が豊かになります。この理想的な発声が「声をアテる」ということです。アテて歌い始めたらそのフレーズが終わるまで(次のブレスまでの間)横隔膜をサポートして声帯を緩めずに歌うことで安定したボーカルになります。この横隔膜のサポート感覚が俗にいう「お腹に力を入れて歌う」や「腹から声を出す」ということなんですが、これについては既出の「ボイトレTips # 009 ♪ 横隔膜の動作について」をご覧くださいませ。さあ、みなさんも歌いなれた曲で「濁点の魔法」を実践してみましょう。でも、やり過ぎると訛った感じになってしまうので、何事も程よい加減が大事です。
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発声に関する書籍がいろいろと出ているようで、そういったの本の内容についての質問を受けることがあります。良くある質問は「声帯をしっかり閉じて効率よく振動させましょう」というレクチャーをすると「喉は開くのではないのですか?」というもの。受講生はその類いの知識を巷にあふれているボイトレ教則本で見ている訳ですが、その受講生が見た本によると「喉を開く」というのは喉を締めつけないで発声するということを言っています。つまり「締めつける」の反対は「開く」ということなのでしょう。喉に力を入れて無理に発声すれば声帯が締めつけられるから喉声になる。だから喉声にならないように喉は開いて発声するのだと説明しています。喉に力を入れて無理に発声してはいけないというのは間違っていません。しかし喉を開くという感覚で発声に有害な締めつける力を抜いて、さらに声を安定させるため声帯をしっかり閉じるということが出来る人はまずいないでしょう。しっかり閉じるためには閉じる力が必要なのです。だから「力を抜いて、力を入れる」という矛盾した動作を要求されることになり、ほとんどの人が結果を出せずに迷ってしまうのです。本を読んでもうまく発声することが出来なかったのは、あなたの理解力、あるいは努力が足りなかったわけではありません。大切なのは声帯の動作について正しく知ることです。なぜ発声時に力を入れてしまうのか理論的にわかれば、その力を排除するのは難しくありません。喉に力を入れてしまうのは理由があります。ほとんどの場合がきちんとアテて発声を始めていないのです。アテる=声帯がきちんと閉じて発声している状態ですが、声帯がきちんと閉じていないと声を持続させることができないため、閉じようとする力がかかります。その力が喉(声帯)締めつける有害な力になってしまうのです。「声帯を閉じる」と「締めつける」はまったく別の感覚です。声帯を閉じる技術を身に付け、その感覚がわかれば自ずと力は抜け、あなたを悩ませた「喉を開く」というイメージは不要になります。
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キリガヤ・メソッドではNeiという言葉で発声練習をしますが、「何故、Neiなの?」という疑問を持たれた方もいることと思います。今回はこのNeiで発声する意味をお話します。声を発する場合、まず声帯が閉じることが必要ですね。つぎに閉じた声帯を締めつけずに閉じた状態をキープすることが出来るとロングトーンが出せるようになります。ロングトーンが安定的に出せるようになってはじめて歌が歌えるようになります。ということで、発声における動作はまず声帯を閉じることですが、Neiというのは声帯が自然に閉じる言葉なので声を出しやすいのです。その理由のひとつはタンギングにあります。タンギングをすると声帯が閉じます。Neiはタンギングをしないと発音出来ない言葉なんですね。試しにタンギングしないでNeiと言ってみましょう。Neiにはなりませんね。そしてもうひとつの理由が二重母音です。二重母音とはひとつの音節の中にふたつの母音がある状態をいいます。たとえばMayは「メィ」となり二重母音ですが、姪は「め・い」と発音するので母音接続というもので二重母音ではありません。この二重母音の言葉は声帯を理想的に閉じるのです。この二つの理由によりNeiは正しい声帯のコントロールを理解するために最適なのです。歌いにくいフレーズは一度、歌詞を全部Neiに置き換えて歌ってみましょう。とても歌いやすくなるはずです。そしてそのNei発声のイメージのまま歌詞に戻して歌います。それを繰り返すことで苦手な箇所を克服しましょう。
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ボーカルが安定しない人は音程を上げる時に声帯をゆるめてしまう傾向があります。声帯をゆるめると音が甘くなるのでダマしダマし目的の音程まで持って行ける気がするのですが、実際は声帯が少し開いてしまうので音圧がぐっと下がり、息も漏れて足りなくなります。さらに、ゆるんでしまった声帯を閉じようと無意識に喉に力が入ります。その力が声帯の振動を妨げるので、ますます声が不安定になるのです。上手く歌えない一番の原因は声が安定しないことです。音程を取ろうとして声帯をゆるめるのは声の不安定を招き、結果的に正確な音程を取ることも難しくなります。それでは声帯を緩めずに音程を上げるポイントをレクチャーしましょう。たとえば5度くらい跳躍する音程、女声ならレからラくらいの音域を歌ってみます。出だしのレはしっかりアテて、そのまま声を伸ばしてラまで持って行きます。ラに行くときに顎が上がると声帯がゆるむので、横隔膜のコンプレッションが入るように少し上体を前傾します。Neiで歌うと声帯をゆるめずに音程を上げることが出来ると思いますので、まずNeiで歌って、その喉のイメージで歌詞を歌うことで少しずつNeiのように緩めない発声へ近づけて行きましょう。
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アテるとき(声帯を閉じるとき)の横隔膜の動作は下から上に押し上げるようになります。つまり横隔膜が上がって声帯が閉じる訳です。したがってお腹に力が入っているとこの横隔膜の動作を邪魔するので声が出難くなってしまいます。お腹に力を入れて歌いなさいと言われて、かえって歌えなくなってしまうのはそのためです。横隔膜のサポートは閉じた声帯をそのままキープして声を持続させるために必要なのであって、発声を始める時の声帯を閉じる動作には横隔膜のサポートは有害なのです。理屈はともかく、どうしたら良いのかと言えば、発声を始める時(アテるとき)はお腹に力を入れない。横隔膜が上がり声帯が閉じて発声が始まったら、その閉じた声帯の状態をキープするために横隔膜のサポートを行う。それによって安定した声を持続することが出来るようになります。さあ、お腹の力の入れ方、もう一度チェックしてみましょう。
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みなさんは立って歌うときに体重のかけ方を意識していますか?何となく立っていると膝が少しゆるみ、体重が踵寄りになっていることがありませんか?
この踵寄りに体重がかかる状態では横隔膜のサポートが甘くなってしまいます。サポートが甘くなると声帯をコントロールするために直接喉に力を入れることになります。喉に力がかかっていると顎を突き出すようなポーズになりますが、喉に力を入れて締めつけて発声すれば当然喉声になってしまいます。
それでは喉声にならないようにするために立って歌う時の体重のかけ方をお教えしましょう。その方法はとてもシンプル。踵よりもほんの少しつま先側に体重がかかるように立つだけです。コツは膝を曲げずに上半身のリラックスをキープしながら、体重をほんの少し前方に持っていく感じです。これだけで腹筋と背筋に緊張が生まれますね。この腹筋&背筋の緊張が横隔膜をサポートするのです。 立ち方を意識するだけで驚くほど声の安定が得られます。ぜひ試してみてください。但し、やりすぎは禁物です。声をアテるときの横隔膜の動作を邪魔するという弊害をもたらしますので!アテるときの横隔膜の動作、声を持続させるための横隔膜のコントロールについてはまた次回お話しましょう。
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発声時の呼吸は安定した腹式呼吸のため口呼吸が基本になりますが、ある受講生から「私はブレス音がマイクに入るのは良くないと思っているので、なるべく鼻で吸うようにしていますが、鼻呼吸でも腹式呼吸は出来ますか?」という質問がありました。
ブレス音、つまり息を吸う時の音ですが、質問された方の説によると「演歌は鼻呼吸なのでブレス音がない」とのこと。これは根拠の無い都市伝説です。その誤りを認識してもらうために実験をしました。まずマイクを歌う時のように近づけて口で息を吸います。とうぜん吸気音がマイクに入ります。つぎに鼻で吸ってみます。やはりシュー!っと吸気音が入ります。むしろ口で吸った時よりも音が大きくなります。演歌などで比較的 大きなブレス音が入らないのは、口で吸うか、鼻で吸うかではなく声の大きさが関係しているのです。マイクで収録された音声は聞きやすい音量に調整しますが、声量のある歌手の場合、歌声の大きさが10、ブレス音の大きさが1とします。歌声の大きさが5の歌手の場合は収録音声のボリュームを上げて音量を2倍にして10の声量にします。するとブレス音も2倍になるという理屈です。つまり声量あるシンガーほどブレス音が小さくなります。鼻で吸うか口で吸うかではないんですね。僕は適度なブレス音が聞こえるのは自然な事だと思いますが、ブレス音にこだわる人も口呼吸、鼻呼吸は直接ブレス音には関係ないのですから口で効率よく吸気して腹式呼吸、つまり的確な横隔膜のコンプレッションを行い、より良い発声を心がけましょう。
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声帯は喉骨の中にあり呼吸時には開き、発声時には閉じます。
声のしくみを簡単に説明すると閉じられた声帯のわずかな隙間から息を吐き出すときにリード楽器のように声帯が振動して音を発します。つまり声帯は閉じていないと発声できないということです。でも閉じるときに声帯の振動を妨害するような力がかかってしまっては豊かな声は出ません。
喉声になってしまうのは声を出そうとして声帯を閉じるときに、声帯の振動を妨げる有害な力も同時にかかってしまうことが原因です。つまり声帯を締めつけて振動を妨げてしまうということです。
ゆたかな発声のために、声帯は「締めつける」ことなく「閉じる」必要があるのです。
しかし残念なことに日本語を話す時の発声は締めつけることで声帯を閉じます。そのため声が持続しないのですが、私たちは声が持続しないことできちんとした日本語を話していると感じるのでやっかいなのです。
声の持続しない歌唱はありえませんから、とくに日本語の場合は会話時と歌唱時は声帯の使い方が違って来ます。「台詞は歌うように、歌は語るように」という言葉がありますが、これは情感の話であって物理的な発声においては「語るように」発声したら歌えないのです。
声帯を締めつけることなく確実に閉じる、という「歌うための発声で、語るように歌う」を目指しましょう。
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